瀾滄江(らんそうこう)は、メコン川の源流です。瀾滄江(梅里)大峡谷は、中国で最も美しい峡谷(10ヶ所)の一つとされています。雲南省徳欽県内に位 置し、北は佛山郷から、南は燕門郷まで全長150キロ、最大標高差は4734mで雲南一の標高差とされています。峡谷は標高2006m、左右をカワクボ峰(梅里雪山主峰、6740m)とザラチュエ二峰(白馬雪山主峰、5460m)に挟まれ、江面から山頂までの斜面は、約14キロあり、1キロあたり337mも上昇し、急峻で直立に近い岸壁に囲まれる大渓谷です。
梅里雪山の麓を流れている流域では、川幅が狭まれ(荒川ほど)、あまりにも急流で谷間が深いため、古くから橋を架けることが出来ませんでした。昔、川の両側に竹編みのロープを張り、そこに滑車(竹の筒)を引っ掛けて川を渡るという、唯一の交通手段を取らざるを得ませんでした。川辺の村は、竹の筒で滑ることから「溜筒江」と名付けられたと言います。危険で相次ぐ人身事故や莫大な財産損失にも関わらず、ここは、雲南とチベットを結ぶ交通の要として「溜筒鎖鑰(要衝の意)」と称されます。
瀾滄江(梅里)大峡谷では、川が深く切り込んでおり、流れが速いため観光客に大変人気です。冬の急な水は透き通り、夏は水量が増し、濁った激流と化します。梅里峡谷流域内の落差は504m、勾配率3.4%です。澎湃たる怒濤が幅の狭い両岸を打つ轟きは、雷のように山谷を震わせ、壮観で思わず胸が躍る景観です。一帯には、高峰と峡谷だけで形成された険しい地形が広がり、世界で稀に見る地理構造をここで見ることができます。中華人民共和国成立後、天険の地に「紅星橋」と「向陽橋」2本の橋を造りましたが、サーカスのような竹ロープ渡りは、所によって今なお現役だと言います。
瀾滄江の河床からカワカブ山頂までの標高差4700mの山腹には、サボテンの生える乾燥地帯から、苔むした森林帯、高山植物の咲く草原帯、雪氷帯にいたるまで、植生と気候の顕著な垂直分布が見られます。また、この一帯は、キンシコウなどの絶滅危惧種の貴重な生息地でもあるため、大峡谷区域は、中国で最も大きく、最も重要な自然保護区の一つと指定されています。
現在、大峡谷を貫く滇蔵公路(雲南省とチベットを結ぶ国道)は既に完成され、新たな「溜筒鎖鑰」となりました。アクセスの良さでこの秘境に来訪する観光客は後を絶ちません。4292mの白馬雪山峠に立って見渡せば、深く険峻な峡谷と、雪で輝く聖なる梅里雪山が織り成す雄大な絶景に神聖な気分になるのは、不思議ではないでしょう。