陝西省は、中国西北地方に位置する、面積20万5800平方kmにも及ぶ省です。「陝(シャン)」あるいは「秦(チン)」という別称で呼ばれることもあります。この地域は、中国の歴史において重要な役割を果たしてきました。周(紀元前1675~紀元前1029年)、秦(紀元前221~紀元前207年)、漢(紀元前206~220年)、唐(618~907年)など、多くの王朝において、この地は政治、経済、文化の中心地でした。一言で言えば、ここで古代の中華文明が育まれたのです。省都は西安市で、ここは北京、南京、洛陽と並ぶ、中国の4大古都のうちの1つです。陝西省は隣接する省の最も多い省で、山西省、河南省、湖北省、四川省、甘粛省、寧夏回族自治区、内モンゴル自治区と接しています。長江と黄河が域内を流れています。
地勢
地図を見ると、陝西省は南北方向に長く(約880km)、東西方向には狭い(160km~490km)、細長い省であることがわかります。陝西省は、北部の高原地帯と南部の秦嶺山脈によって、「陝北」地域(北部)、「関中」地域(中部)、「陝南」地域(南部)の、3つの地域に分けられます。
「陝北」地域は、省の北部の高原地帯に広がっている面積9万2521平方kmの地域で、その北部はオルドス砂漠、南部は黄土高原です。毛沢東とプロレタリア革命の聖地として知られており、延安市には革命の史跡が数多く残されています。また、古代から匈奴、チャン族、満州族、モンゴル族、鮮卑など、たくさんの民族が、歴史の勝者としてこの地を踏みました。そのため陝北は、漢民族の文化だけでなく、これらの民族の文化にも大きな影響を受けています。
面積3万9064平方kmの「関中」地域は、北部の高原地帯と南部の秦嶺山脈の間に広がっています。関中は、渭河(黄河の支流で、陝西省を流れる2大河川のうちの1つ。もう1つは長江の支流――漢江)によってつくられた沖積平野です。平坦で肥沃な土地、水源も豊富で、陝西省の域内で最も自然条件に恵まれています。関中は、中国北部における小麦ととうもろこしの主要な生産地となっています。
歴史と文化
そのような自然条件の良さと、「守り易く、攻め難い」という地理的、地形的なメリットのため、関中は古来の王朝にとって首都を建設する絶好の場所でした。また、ここは中華文明の誕生した場所とも言えます。伏羲(中国の神話伝説時代の皇帝の1人で、中華文明の始祖)、女媧(伏羲の妹で、伏羲と同じく蛇身人首の女神。人間の社会を作り、婚姻の制度を定めたとされている)、炎帝(神農)、黄帝、すべて関中や陝西省と関わりがあります。黄帝と黄帝陵(延安市)についてもっと知りたい方は、他の情報を探してみてください。
古代の首都、西安(長安)と咸陽はこの関中にあり、西安市には、秦始皇陵と兵馬俑、陝西歴史博物館、西安大清真寺(イスラム寺院)、大雁塔など、多くの遺跡、史跡があります。14世紀、明の時代(1368~1644年)に建設された明代城壁も見逃せません。また、たくさんの資料を展示している関中民俗芸術博物院で、関中の文化に触れることができます。
秦嶺山脈の南側に広がる「陝南」地域は、米と油菜の主な産地です。陝南の都市、漢中市は漢民族の生まれ故郷と言えます。前漢(紀元前202~2年)の初代皇帝――劉邦(紀元前256~紀元前195年)は漢王(「漢中の王」)の地位に就き、彼の王朝は漢と呼ばれました。そして、それはやがて中国そのものを意味するようになったのです。三国時代の蜀漢(221~263年)の初代皇帝、劉備(161~223年)も、漢中に彼の王朝を興しました。
天気
陝南の夏は雨の季節で、川下りやラフティングを楽しむのも良いでしょう。陝南を訪れるなら、春か秋がベストです。冬は冷え込みます。陝南の大きな都市としては、漢中市、商洛市、安康市などが挙げられます。
関中の夏は大変暑く、冬は乾燥して冷え込みます。関中を訪れるつもりでしたら、春か秋が良いでしょう。
陝北の冬は寒く、昼夜の大きな寒暖差が特徴です。春になると、陝北では砂嵐が発生します。陝北を訪れるなら、夏か秋口が良いでしょう。陝北の主要都市としては、延安市が挙げられます。
陝西省の名物料理
隣の山西省同様、陝西省のどこに行っても地元の名物料理を味わえます。西安では、羊肉泡[食莫](モ)や陝西凉皮、餃子宴などが有名です。
陝西省の基本情報
- 中国語名: 陕西
- 中国 Pinyin: shǎn xī
- 位置: 華北
- 首都: 西安
- 人口: 37.6 million
- エリア: 205,800 平方km