孔子

　孔子は、周（紀元前1045年 - 紀元前255年）末期の春秋時代、哲学的な創造が開花した時期に生まれました。孔子は、この地のすべての古代の思想家の中で最も人気があり、影響力があります。

歴史上の好機に生まれる

　孔子は哲学的な創造の時代に生まれました。当時、さまざまな地域の支配者は、旧来の氏族共同体を基礎とする身分制秩序が解体されつつあった不確実な時代に知識と権力を求めていました。

　彼は、周王朝が力を失いつつあり、政治的混乱と危機の時期に古代の真実を教えようとしました。数十の諸侯国は、領域国家の形成へと向かい、互いを征服しようとしていました。

　王や支配者は、生き残りと支配のために戦い、また、そのためには何をすべきかを知りたがっていました。彼らは、自身の王国を統治し、危機の時代に生き残るための最善の方法を求めていました。

　失敗を犯すことは彼らの死や王国の破壊に繋がるので、彼らは、知識や政治的戦略、権力を求めていました。王や支配者は、多くの遊説家を抱え、彼らを公職に取り立てたり師としました。孔子は遊説家でもあり役人でもありました。

孔子誕生日に行われる諸行事

　孔子の誕生記念日には9月28日で、中国各地にある儒教寺院で孔子を記念するための行事が行われます。人々は演劇を上演し、肉や酒を捧げて、孔子に敬愛を示します。 孔子誕生日の祭典でもっとも有名でかつ最大なものは、曲阜国際孔子文化祭と衢州孔子文化フェアです。

曲阜国際孔子文化祭

　曲阜は、孔子の生まれた土地として有名です。1989年9月より始まった曲阜国際孔子文化祭は、孔子の偉業を讃え、伝統的な儒教文化の継承を目的としています。この祭は、文化、芸術、研究、観光、科学的活動、およびビジネスまでを網羅しています。開会式は、孔子を讃えるために最初に作られた文廟（孔子廟）で開催されます。

衢州孔子文化フェア

　2004年以来、孔子文化フェアが衢州市の文廟（孔子廟）で開かれています。この廟は、孔家の2つの家廟のうちのひとつでもあります。孔とは孔子の姓であります。おもな行事は壮大な儀式と儒教に関するフォーラムからなります。各国の孔子学院の代表者がこのフェアに参加します。

諸子百家

　孔子は、影響力のある思想家が求められた時期に生まれました。中国の長い歴史の中では、強大な支配者は概して、自分の意に反する考え方を排除する傾向にありましたが、当時は、各地で支配力が小さく乱立している時期であったため、思想的に異なる学派が多数生き残っていきました。

　孔子が生まれた当時、無数の宗教指導者や哲学者、思想家、教師がさまざまな考え方を売り込みました。おそらく、当時は、独自の歴史や民族的背景をもった地域に数多くの王国が割拠しており、数百の学校があったことでしょう。

　彼の時代は、「諸子百家」の時代と呼ばれてきました。この時代は、秦が統一をなし、標準的な哲学や宗教を課していくことになる戦国時代末期まで続きました。

　彼の教えとは、古代の文献を通して、天命を知ることでありました。彼の政治哲学の中のこの重要な信念は、天が支配者を選ぶというものです。彼は、彼の神学と彼の政治思想とを混ぜて教えました。そのため、彼は、社会のどのような者であっても、すべき行動をするということを奨励しました。そうすれば、おのずと調和と繁栄と幸福が訪れると説きました。

　彼の教えは、「しなさい」といった金の教訓ではなく、「してはならない」という行動の銀の教訓とも呼ばれるものでした。たとえば、論語の中に、
　子貢問曰：“有一言而可以終身行之者乎?” 子曰：“其恕乎! 己所不欲、勿施於人。”（子貢問ひて曰はく、 「一言にして以つて終身之を行ふべき者有りや。」と。子曰はく、 「其れ恕か。己の欲せざる所、人に施すこと勿かれ。」と。）という一説があります。
　（孔子の弟子である）子貢が質問して言いました。 「一言、生涯貫き通すべき言葉はありますか。」と。
孔子先生はおっしゃいました。
「それは恕（思いやりの心）であろうか。自分がしてほしくないことは、他人にもしてはならない。」と。"

　他にもこのような良く知られた教えがあります。
　疏食飲水，曲肱而枕，樂在其中矣。不義而富貴，於我如浮雲。 （疏食（そし）を飯（くら）い、水を飲み、肱を曲げて之を枕とす。楽また其の中に在り。不義にして富かつ貴きは、我に於て浮雲（ふうん）の如し。）
　飯を水でかきこみ、肱ひじを枕にして寝るような貧しい暮らしでも、そのなかに楽しみはあるものだ。不義によって得た富や位は、私にとっては浮雲のようなものだ

　知之為知之，不知為不知，是知也。（之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らざると為す。是れ知るなり）
　自分の知っていることは知っているとし、まだ知らないことは、どこまでも知らないとはっきり区別する。これが本当に知るということだ。

　こうありますが、老子は逆の言葉を残しています。

　道可道，非常道。名可名，非常名。（道の道とすべきは、常の道に非ず。名の名とすべきは、常の名に非ず。）
　これが「道」だと言い表せる様な道なら、それは不朽の道ではない。これが「名」だと呼べる様な名なら、真実の名ではない。
　…とまあ、なんとも悩ましいものです。

孔子の弟子

　孔子の弟子たちは、戦国の国々をまわり、彼の教えを伝えました。論語は、孔子の述べた言葉を彼の弟子たちがまとめたものです。講師の哲学を知りたい外国人にとって、論語は文章も平易ですから一番の入門書となることでしょう。

　孔子の死後、2人の弟子たちは影響力をもつようになりました。彼らは、お互いに対立する思想を紹介していきました。ひとりは(孟子（紀元前371–紀元前289)であり、もうひとりは荀子（紀元前300–紀元前237)です。

　孟子は、孟子と呼ばれる書籍の著者であり、この本は哲学的対話集です。彼は孔子の孫の弟子であったとも言われています。

　孟子の基本的な教えの1つは、人間の本質は基本的には善であるが、訓練が必要だということでした。彼は多くの哲学的理論をこの公理に基づいて展開しています。この儒教哲学は、後の時代の新儒学者によって最も広く受け入れられました。

　荀子は、人間の本質は悪であると教え、孟子の教えとは対照的です。これらのアイデアは、永遠の哲学的宗教的潮流と呼ばれる儒教を生み出しました。

各地の文廟（孔子廟）